クリエイター鼎談
本作の脚本・演出家にして、発案者の一人でもある西川大貴。もう一人の発案者である、シーエイティプロデュースの取締役プロデューサー、江口剛史。そして江口から託され、今作でプロデューサー・デビューを果たす七字紗衣。『(愛おしき)ボクの時代』のキーパーソン3人が、企画意図から日本演劇界への熱い思いまで、ディープに語り尽くします!
聞き手・構成/町田麻子
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プロジェクト仕掛け人による本音のクロストーク!
【Vol.5(最終回)】若い力でつくる "ハチャメチャ" なミュージカル!
――最後にいよいよ、作品の具体的な話を伺います。先ほど江口さんが「ハチャメチャで楽しい」とおっしゃったストーリーは、どのように生まれたものなのでしょうか。
西川 根幹にあるのは、僕がちょっと疲れていた時に漠然と感じた、「自分が動いてるんじゃなく、目に見えないものによって動かされてるんじゃないか」という思いです。ひょいひょいって運ばれているだけでも生きていけてしまう、現代人の圧迫感とか窮屈感を元に、海外との関係性だったり世代間ギャップだったりを盛り込みながら書いていきました。
七字 物語は、日常から不思議な世界へとトリップするファンタジーです。若者のアイデンティティーを求める葛藤、親と子の関係、恋愛…とテーマは普遍的ですが、20~30代くらいの方にとっては特に、私たち世代ってこういうところあるよね!というリアルな感覚もあり、まさに "今" らしい作品だなと思います。また、どの世代の方にもそれぞれにピンとくるような遊び心がたくさん散りばめられていて、楽しい作品になっています!ちなみに、今回メインビジュアルはカネコサヤカさんというデザイナーさんに、イラストで作品の世界観を見事に表現していただきました。ハチャメチャ具合が伝わると思います(笑)。HPのトップ画面でも見られるので、ぜひじっくり眺めて「どんな作品なんだ!?」といろいろ想像していただけたら嬉しいです。もちろんこういう企画ですから、今ある台本もまだまだ完成形ではないですが、初稿からダレンさんに何度も読んでいただきながら直していって、もう7稿目くらいですよね?
西川 そうですね。ダレンと江口さんからの助言は、本当にありがたいです。
江口 いやいや、助言だなんてとんでもない。僕は理詰めができない感覚人間だから(笑)、感じたことをお伝えしただけ。でもどんどん良くなってきているし、まだまだハチャメチャになるぞ!という大きな期待感を持っています。
――音楽をジャズピアニストの桑原あいさんに、というのはどういう経緯で決まったことなのですか?
西川 桑原との出会いは、アルゴミュージカルです。今はもうなくなってしまいましたが、日本人の手によるオリジナル・ミュージカルを名もない子どもキャストをメインに据えて上演するという、それこそ今回の企画のようなことを毎年やっていたのがアルゴミュージカル(1987~2008)。僕が初めて参加した時の音楽はカラオケだったんですが、翌年から音楽も子どもたちで生演奏しようということになり、エレクトーン奏者として参加してきたのが桑原でした。僕が14歳、桑原が13歳の時ですね。
江口 そんなに昔からの付き合いだとは知らなかったな(笑)。
西川 ちなみに振付の加賀谷一肇君とも、13歳の時のアルゴミュージカルが出会いです。桑原とはそれから数年間交流がなかったんですが、彼女がエレクトーンからジャズピアノに転向してライブをすることになった時、タップを入れたいということで連絡をもらいまして。それがきっかけで一緒にオリジナル曲を作ったり、「かららん」というポップスの音楽プロジェクトを立ち上げたりもするなかで、ミュージカル音楽を解析する能力がものすごく高いことが分かったんです。演劇のフィールドでも何かやりたいねっていう話をしたのが、ちょうど江口さんに焼き鳥屋に誘われる4か月前の話で。
七字 2018年は西川さんにとって、桑原さん、ダレンさん、江口とタイミングよく会えた、運命的な年だったんですね(笑)。
西川 本当に(笑)。それで今、桑原が作曲をしてくれてるんですが、まあ~名曲が生まれています。僕の詞を元に、この順序を入れ替えたほうがミュージカル的に面白い、とかっていう判断が躊躇なくできるセンスはすごいなと思わされますね。西洋のスタンダードが日本ナイズされた面白さ、という今回のテーマに即した音楽にもなっていると思います。
江口 僕も聴かせてもらいましたが、音楽自体のセンスの良さに加えて、西川さんの詞がちゃんと乗っているところがいいなと。ミュージカルってやっぱり、歌詞が残ることもすごく重要ですからね。まだまだブラッシュアップは必要ですが、今の時点で、原石としては面白いものが上がってきている手応えがあります。
七字 日本のミュージカルというだけで、"ダサい" というイメージを持つ方は絶対にいると思うのですが(笑)、そういう印象は与えない音楽だと思います。
江口 僕は逆に、ダサダサと思われてもいいというか(笑)、「こうならないように」「こうあるべきだ」って考える必要はないと思ってるんだけどね。それよりも、「これが俺たちの作品だ!」って、自信を持って発信することが大事。なんて言いながら、いちばん「ミュージカルはこうあるべきだ」っていう固定観念があるのはきっと僕だから(笑)、あんまり口出ししないようにしないと。若い皆さんのお力を信じています。
七字 まだまだ力不足ですが、何でもやってみていいという機会をもらったからには失敗を恐れず、どんなことも「これは無理だろう」とは思わずにチャレンジするつもりです。失敗するチャレンジがあっても、必ず今後にはつながっていくと思うので。
西川 僕もそう思います。失敗を前提にしているわけではなくて、「成功させなきゃ」って気持ちにがんじがらめになって、モヤモヤしながら本番を迎えることになったら意味がないですからね。たくさん失敗しながら、高みを目指していきたいです。
七字 私は今回の公演は、お客様にも一緒に高みを目指すような気持ちで楽しんでいただけるのが一番ではないかと思っているんです。皆さんからご意見をいただいてブラッシュアップしていきたいので、応援していただけたら嬉しいですね。
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Producers' profile
◎江口剛史(えぐちたけし)
1958年生まれ。2001年設立当初より、シーエイティプロデュース企画・製作のほぼ全ての公演にてプロデューサーを担う。そのジャンルは翻訳作品からオリジナル、ストレートプレイ、ミュージカル、ノンバーバルパフォーマンスや落語までと多岐に渡り、現在では年間十数本の作品を企画し続けている。主な製作作品に、『BACKBEAT』『Defiled』『黄昏』『6週間のダンスレッスン』『BLUE/ORANGE』『W3』『フロッグとトード』『Forever Plaid』『さくら色オカンの嫁入り』『今は亡きヘンリーモス』など。また、製作作品による主な受賞歴に、第二十二回読売演劇大賞優秀作品賞(『ヒストリーボーイズ』)、第五十一回紀伊國屋演劇賞団体賞(『End of the RAINBOW』『クレシダ』『テイクミーアウト』の優れた舞台成果に対して)がある。
◎七字紗衣(しちじさえ)
1989年生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業後、同大学助手勤務を経て、2015年シーエイティプロデュースに入社。携わった主な作品に、『スポケーンの左手』(2015)、『MURDER for Two』『クレシダ』(2016)、『CRIMES OF THE HEART―心の罪―』(2017)、『ぼくの友達』『マクガワン・トリロジー』『新・6週間のダンスレッスン』(2018)(以上、制作)、『ソーホー・シンダーズ』(2019)(アシスタント・プロデューサー)など。