クリエイター鼎談
本作の脚本・演出家にして、発案者の一人でもある西川大貴。もう一人の発案者である、シーエイティプロデュースの取締役プロデューサー、江口剛史。そして江口から託され、今作でプロデューサー・デビューを果たす七字紗衣。『(愛おしき)ボクの時代』のキーパーソン3人が、企画意図から日本演劇界への熱い思いまで、ディープに語り尽くします!
聞き手・構成/町田麻子
プロジェクト仕掛け人による本音のクロストーク!
【Vol.1】すべては焼き鳥屋から始まった
――まずは、今回のこのチャレンジングな企画がどのような経緯で生まれたのかをお聞かせいただければと思います。
江口 事の発端は、ミュージカル『TOP HAT』(2018年11月のシーエイティプロデュース公演)の稽古中、稽古場代役として参加してくださっていた西川さんを僕が飲みに誘ったこと。たまたま帰り道が一緒だったから誘っただけなんですが、西川さんが作・演出もされることは知っていたので、「オリジナル・ミュージカルつくりましょうよ」なんて話をしたら盛り上がってしまって。
西川 そうでしたね、確か森下の焼き鳥屋で(笑)。オリジナル作品をつくりたい思いは元から持っていましたけど、プロデューサーの方と直接話す機会なんてなかなかないですから、僕としては「うぇ~い!」という感じでした(笑)。プレビュー公演をしたいとか、ダレン(・ヤップ)に関わってもらいたいとか、その時点でかなり具体的な話をさせてもらった覚えがありますね。
江口 そうそう、それで僕のほうでも、ちょうど翌年のラインナップを考えていた矢先でもあったからすぐに動き始めて。その時から、クリエイターだけではなくスタッフも含めて、自分ではなく次の世代の人たちが中心になるべきだ、という思いは明確でした。そんな時に、うちの七字が自分からやりたいと言ってきてくれたんですよ。
七字 私が担当していた『ソーホー・シンダーズ』(2019年3月のシーエイティプロデュース公演)の大阪公演中、これもたまたまなんですが、西川さんとスタッフの方とご飯に行く機会がありまして。そこで初めて、江口と西川さんがそういう話をしてることを聞いて、「おっ、知らないぞ?」となったんです。稽古中から、西川さんが何度も江口に呼び出されて、廊下でずっとしゃべってらしたのは見ていたんですが、その時は「西川さん、よっぽど『ソーホー』の役作りで悩まれてるのかな」と思っていたので(笑)。
西川 そうだったのか!(笑)
七字 すみません(笑)。そうではなかったことが分かって、そのあとで江口に会って詳しい話を聞いた時に「何らかの形で関わりたい」と、確かに私から言いました。ただ、私はずっと"制作"として仕事をしてきたので、"プロデューサー"として名乗りをあげたということではないんです。
江口 確かにそこについては、僕のほうから言ったかな(笑)。僕も還暦を超えましたから、次の世代を育てたいなと。それに、オリジナル作品をゼロからつくるというのは、翻訳ものよりもずっと大変なわけですよ。台本があるというのはありがたいことで、必要なキャストの人数があらかじめ分かるし、完成形もイメージしやすい。でもオリジナルとなると、西川さんの頭の中にしかないものを想像したり引き出したりしながら、なおかつそれを予算内に収める方法を考えることになりますから、従来“制作”としてやってきた作業をやるだけでも、それは既に“プロデューサー”の仕事だという思いもありました。
――七字さんが関わりたいと思われたのは、主にどんな理由からだったのでしょうか?
七字 私自身が西川さんと同世代ということもあって、まず共鳴したのは「若い世代でつくる」という部分でした。それと、会社なので当然利益は出さないといけないんですが、それ以上に「良い作品をつくる」「若いクリエイターに活躍の場を与える」ことを優先している江口の姿勢に感銘を受けたことも大きいです。
西川 そこ、本当に素晴らしいですよね!
江口 いやいや、そんな大したことではないんですよ。おかげさまでうちもやや安定期に入って、そういうものに投資することも必要なんじゃないかと。うちは劇団ではないし作家も抱えていないから、どうしても翻訳ものが多くなるわけですが、そうなると毎回、莫大な権利料を海外に払っているんですよ。そのお金を日本のクリエイターに投資することを、そろそろしてもいいんじゃないかと思ったわけです。
西川 やっぱり素晴らしいと思います。そう思ってくださるプロデューサーの方って多くはないだろうし、僕ら役者は役者で「どうせ日本じゃ無理だろう」って諦めちゃってる部分があって、だからこそ焼き鳥屋で話が進んだ時、僕は「うぇ~い!」ってなったわけですから(笑)。
江口 あの焼き鳥屋、また行きたいね(笑)。ひとつ失礼のないように言っておきたいのは、日本でもオリジナル・ミュージカルづくりをしていらっしゃるところは、それこそ戦前からたくさんあるんですよ。うちもやってきていますし、今回の企画を「一大プロジェクト」と謡っているのは、「オリジナル・ミュージカルをつくること」がポイントではない。それだけは申し上げておきたいと思います。
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Producers' profile
◎江口剛史(えぐちたけし)
1958年生まれ。2001年設立当初より、シーエイティプロデュース企画・製作のほぼ全ての公演にてプロデューサーを担う。そのジャンルは翻訳作品からオリジナル、ストレートプレイ、ミュージカル、ノンバーバルパフォーマンスや落語までと多岐に渡り、現在では年間十数本の作品を企画し続けている。主な製作作品に、『BACKBEAT』『Defiled』『黄昏』『6週間のダンスレッスン』『BLUE/ORANGE』『W3』『フロッグとトード』『Forever Plaid』『さくら色オカンの嫁入り』『今は亡きヘンリーモス』など。また、製作作品による主な受賞歴に、第二十二回読売演劇大賞優秀作品賞(『ヒストリーボーイズ』)、第五十一回紀伊國屋演劇賞団体賞(『End of the RAINBOW』『クレシダ』『テイクミーアウト』の優れた舞台成果に対して)がある。
◎七字紗衣(しちじさえ)
1989年生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業後、同大学助手勤務を経て、2015年シーエイティプロデュースに入社。携わった主な作品に、『スポケーンの左手』(2015)、『MURDER for Two』『クレシダ』(2016)、『CRIMES OF THE HEART―心の罪―』(2017)、『ぼくの友達』『マクガワン・トリロジー』『新・6週間のダンスレッスン』(2018)(以上、制作)、『ソーホー・シンダーズ』(2019)(アシスタント・プロデューサー)など。